琉球道中記>やんばる三村編
旅は山原(やんばる)路から始まった
辺戸岬で風景を堪能していた一行だったが、時刻は既に正午を経過しており、味覚も堪能したい気持ちになっていた。ちょうどこの岬に巨大なオバァの看板が目立つ「やんばる茶屋」があったので、この茶屋で昼食を済ませることにした。ここは名護黄門が旅の途中に立ち寄った最初の茶屋としてその名を残すこととなった。
![]() やんばる茶屋 |
![]() 国道58号線全長図 |
![]() 国道58号線の始点にて |
![]() 奥の民宿「海山木」 |
広々とした茶屋はガラス張りで景色もよく、食事をしながら広大な景色を楽しむことができた。一行はそばや定食などを注文し舌鼓を打ったが、最近Ryuが注文したものが最後になることが多く、今回もそうだった。今後道中でそのようなケースがどれくらいあるか意識していきたい。
茶屋を出たあと、一行は沖縄本島で最も奥にあるという「奥」集落へと向かった。しかしその途中にある巨大なヤンバルクイナの展望台にも立ち寄ることにした。このヤンバルクイナの展望台はかなりリアルに作られており、辺戸岬からもその姿が見えるがかなり目立つ。いつか与論島に行ったら望遠鏡で確認してみたくなる建造物となるだろう。一行は展望台からの景色を楽しんだが、すぐ真下の海ではサーファー達が波を楽しんでおり、同じくサーファーでもある和子はそちらにも目を光らせた。今後名護黄門の旅では各地のサーフィンのポイントにも出会うこととなるだろう。
ヤンバルクイナ展望台を後にし、黄門一行は奥へと向かった。車は深い森の間の道に入っていき、奥という名にふさわしい景色となってきた。道路沿いの桜並木が美しい花を咲かせ、旅情をかき立てる一方で、道路を見るとシリケンイモリなどのやんばるの生き物が横断していたりもするので十分に注意が必要な道路だ。我々にとっては便利な道も、生き物にとってはさぞ危険なものであろう。やがて奥の集落に入ってきた。山と川と海、そして赤瓦の家々・・・人の気配も少なく時間が止まったような風景だ。祭りで賑わうこともある集落だが、普段はひっそりとした昔ながらの空気が残っているのであろう。
この集落は実は沖縄の主要道、国道58号線の始点がある場所なのだ。那覇などの、あの賑やかな車がひしめく58号線も、始点はこんなに静かな自然豊かな集落から始まっているのだ。それはまるで山の奥の小さな流れから、都市が取り巻く大河に成長していく川の流れを連想させた。国道58号線は実は沖縄本島だけではなく、始点である奥から北へ、海を仮想的に通り、鹿児島の奄美大島で再び出現する。さらに北上し種子島、そして九州本土の鹿児島にも存在する。実際には九州から沖縄まではつながっていないが、この道は鹿児島までつながっているのだ。鹿児島市、種子島及び奄美の58号線の写真を持っている人がいれば是非見せていただきたい。
始点のすぐ側には、奥集落の民宿「海山木(みやぎ)」があった。茅葺屋根と囲炉裏がなんとも懐かしい気持ちにさせてくれる。同じ沖縄本島とは思えない、なんともいえない雰囲気が周囲を包んでいる。人気の宿であるのもうなづける。しかしこの日の宿は人の気配がなかった。買出しにでも行ったのであろうか。一行が民宿と集落の雰囲気に浸っていると、宿の奥から白い子犬が現れ、一行を歓迎した。子犬なのにとても落ち着いた感じの癒し系の実にかわいい犬だったので、一行はそのかわいさに癒され、旅の疲れも忘れた。おそらく宿の看板犬なのだろう。
やがて奥をあとにすることになったが、驚いたことにこの子犬は見送りまでするのだ。黄門一行が車に乗り込むのを道の側で見ており、出発して子犬のほうを振り向くと、道の真ん中にちょこんと立ってこちらを見送っているのだ。そして曲がり角を車が曲がろうとすると、それを見届けて宿へと戻っていった。まるで宿のヘルパーそのものの不思議な魅力いっぱいの犬だった。一行はその犬の見送りに感動しながら次の目的地へと向かうのだった。
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